名古屋市北区「北区フリモ」| 2013年9月号掲載

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商店街に建つ
昔ながらの芝居小屋

大衆演劇 鈴蘭南座

現在、大衆演劇が観られる劇場は名古屋では北区の鈴蘭南座のみ。
今回、主人である長野榮太郎さんに
大衆娯楽文化の牽引者としての努力を振り返ってもらいました。
今もなお、ファンに愛される芝居小屋。その理由が明かされます。

■大物役者も舞台に立った
商店街の芝居小屋
 存続と廃業との狭間で気持ちが揺れる中、偶然、南座のファンから「いい旅一座があるから、舞台に立たせてほしい」との提案が持ち上がりました。長野さんはその提案を受け入れ、久々に大衆演劇が南座で公演されることに。すると、地元の新聞社が「南座に大衆演劇の火が灯る」と大々的に記事を書き立てました。そこから、再び大衆演劇でも観客が集まるようになり、貸しホールとの両立で南座が持ち直したのです。<br /> 再び注目が集まると、長らく南座で公演がなかった旅一座からも「公演させてほしい」と声がかかるようになり、次第に大衆演劇の割合が増大。ファンも後押しし、大衆演劇小屋としての南座が蘇ります。<br /> 1980年代に入ると、世間では梅沢富美男さんが「下町の玉三郎」としてテレビなどでも脚光を浴び、近年では早乙女太一さんが注目されています。「スター役者が現れると、相乗効果で南座も盛り上がります」と長野さん。<br /> 2014年、南座は創業60周年を迎えます。長野さんは60周年公演を飾るにふさわしい旅一座をすでに心中で決めており、期待で胸をふくらませています。「ここまでの道のりは平坦ではありませんでしたが、今は行けるところまで行こうと思っています」と決意を語りました。<br /> 改めて、長野さんに大衆演劇の魅力を聞いてみると、「なんといっても歌と踊りとお芝居がたっぷり楽しめるところ」とほほ笑みます。「お芝居は勧善懲悪のわかりやすいストーリー。女形の舞踊にはうっとりします。これらがたっぷり3時間披露されて、低価格で楽しめるから庶民の娯楽なんですね」<br /> 南座は、演者とお客さんの距離が近いのが魅力の一つ。「どこから観賞しても『かぶりつき』なんです。だから、お客さんのワクワク感もほかとは違う。お客さんがワクワクしていれば、演者さんの気分も乗ってきますでしょう。最近は、驚くことに20・30代の若い方も来てくれますから、南座全体に活気が生まれた気がします」<br /> 現在、有名な観劇場で活躍している役者はたくさんいます。そんな彼らの原点はやはり街の小さな芝居小屋。南座では、すでに来年初頭まで公演予定が埋まっているそうです。中には、全国的に注目を浴びている有名旅一座の公演も。未来の千両役者を南座で観賞し、大衆演劇の魅力を体感してみてはいかがでしょうか。
<br /><br /> 文/和佐田真

小屋は役者から飛び散る汗もわかるほどの大きさ。観客はカーペットの敷かれたフロアに座って観劇します。座椅子の貸し出し(有料)もあり

 かつて庶民の娯楽であった、大衆演劇。その成り立ちはといえば、江戸時代にまでさかのぼります。旅一座による、人情劇や剣劇の芝居と、歌や踊りのショー。役者と観客の一体感が身上です。
 長い歴史を誇る大衆演劇ですが、近現代は、娯楽の多様化に伴い、大衆の楽しみからコアなファンの趣味となってしまいました。しかし、大曽根駅西側のすずらん通り商店街には、今なお大衆演劇を公演し続ける芝居小屋「鈴蘭南座(以下、南座)」があります。
 現在、南座を切り盛りするのは、2代目主人の長野榮太郎さん。南座は、先代が昭和29年に開場し、以来59年、名古屋と地域の娯楽文化に貢献してきました。娯楽遺産とも言える貴重な南座ですが、長野さんは「かつては取り壊そうと思ったこともある」と、苦渋の時代を振り返ります。
 先代は生粋の大衆演劇好き。好きが高じて南座を開きました。長野さんは、18歳になると、小屋の支配人となって、公演スケジュールを組んだり、宣伝活動をしたりと、南座のために立ち回るように。しかしその頃、テレビ文化が一般に浸透し、少しずつ芝居小屋に足を運ぶ観客が減り、長野さんは危機感を抱き始めます。南座では、全国を巡業する旅一座が月替わりでやってきて毎日公演を行うのですが、次第に公演に穴が空くようになりました。
 「公演がないということは、お客さんを集められないということ。すなわち、収入がないことを意味します。そこで旅一座以外の劇団や音楽バンド、大学の演劇部などに、公演の場として南座を貸すようになりました」
 苦肉の策として始めた貸しホール事業ですが、思いのほか好評で、演者はもちろん、大衆演劇以外の娯楽ファンが南座に愛着を持つようになります。
「佐藤B作さんを中心に今も活動している『東京ヴォードビルショー』が演劇をしましたし、泉谷しげるさんもウチで演奏してくれました」と長野さん。ほかには、松井誠さんや片桐はいりさんなど、現在も芸能現場で活躍する皆さんが南座の舞台を踏みました。
「貸しホール事業に力を注いではいましたが、やはり将来のことを考えると不安でした。先代に『廃業しよう』と言いましたよ。でも、『なんとか残してくれ』と懇願されてしまってね。こっちは飲食業を始めようと調理師免許まで取得していたのに」と苦笑します。
■大衆演劇の人気が再燃
来年は、開業60周年
 存続と廃業との狭間で気持ちが揺れる中、偶然、南座のファンから「いい旅一座があるから、舞台に立たせてほしい」との提案が持ち上がりました。長野さんはその提案を受け入れ、久々に大衆演劇が南座で公演されることに。すると、地元の新聞社が「南座に大衆演劇の火が灯る」と大々的に記事を書き立てました。そこから、再び大衆演劇でも観客が集まるようになり、貸しホールとの両立で南座が持ち直したのです。<br /> 再び注目が集まると、長らく南座で公演がなかった旅一座からも「公演させてほしい」と声がかかるようになり、次第に大衆演劇の割合が増大。ファンも後押しし、大衆演劇小屋としての南座が蘇ります。<br /> 1980年代に入ると、世間では梅沢富美男さんが「下町の玉三郎」としてテレビなどでも脚光を浴び、近年では早乙女太一さんが注目されています。「スター役者が現れると、相乗効果で南座も盛り上がります」と長野さん。<br /> 2014年、南座は創業60周年を迎えます。長野さんは60周年公演を飾るにふさわしい旅一座をすでに心中で決めており、期待で胸をふくらませています。「ここまでの道のりは平坦ではありませんでしたが、今は行けるところまで行こうと思っています」と決意を語りました。<br /> 改めて、長野さんに大衆演劇の魅力を聞いてみると、「なんといっても歌と踊りとお芝居がたっぷり楽しめるところ」とほほ笑みます。「お芝居は勧善懲悪のわかりやすいストーリー。女形の舞踊にはうっとりします。これらがたっぷり3時間披露されて、低価格で楽しめるから庶民の娯楽なんですね」<br /> 南座は、演者とお客さんの距離が近いのが魅力の一つ。「どこから観賞しても『かぶりつき』なんです。だから、お客さんのワクワク感もほかとは違う。お客さんがワクワクしていれば、演者さんの気分も乗ってきますでしょう。最近は、驚くことに20・30代の若い方も来てくれますから、南座全体に活気が生まれた気がします」<br /> 現在、有名な観劇場で活躍している役者はたくさんいます。そんな彼らの原点はやはり街の小さな芝居小屋。南座では、すでに来年初頭まで公演予定が埋まっているそうです。中には、全国的に注目を浴びている有名旅一座の公演も。未来の千両役者を南座で観賞し、大衆演劇の魅力を体感してみてはいかがでしょうか。
<br /><br /> 文/和佐田真

勧善懲悪の人情劇が多く、間近な舞台に感情移入して観ることができる

 存続と廃業との狭間で気持ちが揺れる中、偶然、南座のファンから「いい旅一座があるから、舞台に立たせてほしい」との提案が持ち上がりました。長野さんはその提案を受け入れ、久々に大衆演劇が南座で公演されることに。すると、地元の新聞社が「南座に大衆演劇の火が灯る」と大々的に記事を書き立てました。そこから、再び大衆演劇でも観客が集まるようになり、貸しホールとの両立で南座が持ち直したのです。
 再び注目が集まると、長らく南座で公演がなかった旅一座からも「公演させてほしい」と声がかかるようになり、次第に大衆演劇の割合が増大。ファンも後押しし、大衆演劇小屋としての南座が蘇ります。
 1980年代に入ると、世間では梅沢富美男さんが「下町の玉三郎」としてテレビなどでも脚光を浴び、近年では早乙女太一さんが注目されています。「スター役者が現れると、相乗効果で南座も盛り上がります」と長野さん。
 2014年、南座は創業60周年を迎えます。長野さんは60周年公演を飾るにふさわしい旅一座をすでに心中で決めており、期待で胸をふくらませています。「ここまでの道のりは平坦ではありませんでしたが、今は行けるところまで行こうと思っています」と決意を語りました。
 改めて、長野さんに大衆演劇の魅力を聞いてみると、「なんといっても歌と踊りとお芝居がたっぷり楽しめるところ」とほほ笑みます。「お芝居は勧善懲悪のわかりやすいストーリー。女形の舞踊にはうっとりします。これらがたっぷり3時間披露されて、低価格で楽しめるから庶民の娯楽なんですね」
 南座は、演者とお客さんの距離が近いのが魅力の一つ。「どこから観賞しても『かぶりつき』なんです。だから、お客さんのワクワク感もほかとは違う。お客さんがワクワクしていれば、演者さんの気分も乗ってきますでしょう。最近は、驚くことに20・30代の若い方も来てくれますから、南座全体に活気が生まれた気がします」
 現在、有名な観劇場で活躍している役者はたくさんいます。そんな彼らの原点はやはり街の小さな芝居小屋。南座では、すでに来年初頭まで公演予定が埋まっているそうです。中には、全国的に注目を浴びている有名旅一座の公演も。未来の千両役者を南座で観賞し、大衆演劇の魅力を体感してみてはいかがでしょうか。

 文/和佐田真

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