多治見市「おりべくらぶ」| 2011年12月号掲載

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高田焼の灯を絶やさぬ、熱血職人のモノづくり

いまこそ、湯たんぽの温もりを。

冬の節電グッズとして、ひそかなブームを巻き起こしている湯たんぽ。
しかし、高田町・弥満丈欅窯(やまじょうけやきがま)から生まれてくる湯たんぽは、 エコグッズでも節電グッズでもなく、職人の優しい温かさが込められた素敵な逸品でした。

■試行錯誤を重ねて完成 モノづくりの原点を伝え 体と心を温める湯たんぽ
迷路のような狭い路地を抜けてたどりつく、弥満丈欅窯。風の通る地形や高田特産の土など、多治見の風土を十二分に生かした窯で、工場は加藤さんが自力で建てたものです。その中で行なわれている、湯たんぽ作りの一部を見せてもらいました。<br /><br />1.型を取る(がばいこみ)<br />石膏の型に土を流し込み、型の内壁に土がついて厚みが出たら、中の土を出して均一にして、半日ほど自然乾燥。石膏が水分を吸って固くなる。ちなみに、湯たんぽ表面が波型になっているため、中の土を出すときにやわらかい土が流れ出ない仕組みになっている<br />2.注ぎ口を作る<br />栓をするための注ぎ口は、工具でねじを切って作る。作った注ぎ口は、石膏で型をとった湯たんぽ本体に土で接着する。栓は、また別に作るのだそう<br />3.釉薬(うわぐすり)をつける<br />調合された釉薬を攪拌し、湯たんぽ本体をくぐらせる。このときのくぐらせ方は、釉薬の粘度や含まれる金属分など性質によってそれぞれ違うため、「この工程は経験値がものを言う」(加藤さん)。湯たんぽの注ぎ口は、指につけた皮の指ぬきでふさぐ<br />4.窯で焼く<br />内部は真っ白な6m のガス窯。ここに湯たんぽを入れてじっくり時間をかけて焼く。また、ゆっくりと時間をかけて冷却されるのも大窯の特徴で、趣味の陶芸などで使う小型の窯とは比べ物にならないくらい、釉薬の色も仕上がり具合も変わる<br />

 弥満丈欅窯は、1616年、高田焼の幕開けとともに歩み始め、加藤徹さんで13代目。この地区では、かつて〈口ばかりで中身は空っぽ〉と言われた「高田の貧乏徳利」を焼いていました。「酒屋の屋号が入っているでしょう」と加藤さんが見せてくれた風流な徳利。これにお湯を入れて足を温めたのが、湯たんぽの起源でした。
 ただ、徳利はその形ゆえに転がってしまいます。そこで、動かないように足をつけたり、カマボコ型にしたりと変遷を重ねました。最終的には、広い表面積で温かい領域を大きく確保し、トタン屋根のように表面を波型にすることで強度を上げた、おなじみのデザインに行き着いたのです。
 そもそも、高田産の土には、植物由来の珪酸(けいさん)が約80%、酸化チタンが0.5%ほど含まれています。ち密な土は保温性に優れ、さらに抗菌作用があるといいます。その抗菌力は、高田焼の水がめに生水を入れておけば半日で飲めるようになり、酒を入れておけば二級酒が一級酒になるというほどです。水の力を最大限に引き出す高田の土は、湯たんぽに最適だったのです。
 こうした背景から高い評価を得た高田の湯たんぽは、昭和20年代には最盛期を迎え、高田町では32軒の窯で、職人が腕を振るいました。しかし、大阪万博のころから家電製品にその座を譲ると、その後は低迷。湯たんぽを焼く窯は、現在では2軒にまで減ってしまいました。それなのに、いまだに加藤さんが湯たんぽにこだわるのはなぜでしょう。
「今のエアコンや電気毛布は、体表から水分を蒸発させることで体を温めるんですよ。これは当然、肌にもよくありません」。加藤さんは情熱的に続けます。「体のことだけじゃありません。本来、モノは売れるか売れないかだけを尺度にしてはいけないんです。また、『エコ』などの金看板をつけて売るものでもない。湯たんぽは単価も安く、収支はぜんぜん合わないですよ。でも私は、湯たんぽを通じて、〈モノで物申したい〉。社会にとって、本当に優しいものを作りたいのです」
 先ごろ起こった東日本大震災。被災者のために、加藤さんは燃えるような赤い湯たんぽを作りだしました。心のよりどころになるような、確かに温かいものを届けたい、という思いを込めて…。彩りを加えた湯たんぽに激励の気持ちを込め、被災者を元気づけようとしているのです。そんな加藤さんが世に送り出す湯たんぽの熱源は、お湯というよりもむしろ、職人としての心意気と情熱だといっていいでしょう。 「昔、みんなが貧乏だった時代、暖房は湯たんぽが主流でした。そのひとつの湯たんぽを使って家族たちが肩を寄せ合って温まったものです。夜になれば、母親が湯たんぽを布団に入れてくれて、すきまから風が入らないように隅をポンポンと叩いてくれました。今のモノづくりには、そうした体温ともいうべきものが失われてしまっているのではないでしょうか?モノづくりをやる人が本気でメッセージ性を持って伝えようと思えば、こうした温もりだって伝わります。私はこれからも、社会提案型のモノづくりを続けていきます」
■弥満丈欅窯の湯たんぽづくり
迷路のような狭い路地を抜けてたどりつく、弥満丈欅窯。風の通る地形や高田特産の土など、多治見の風土を十二分に生かした窯で、工場は加藤さんが自力で建てたものです。その中で行なわれている、湯たんぽ作りの一部を見せてもらいました。<br /><br />1.型を取る(がばいこみ)<br />石膏の型に土を流し込み、型の内壁に土がついて厚みが出たら、中の土を出して均一にして、半日ほど自然乾燥。石膏が水分を吸って固くなる。ちなみに、湯たんぽ表面が波型になっているため、中の土を出すときにやわらかい土が流れ出ない仕組みになっている<br />2.注ぎ口を作る<br />栓をするための注ぎ口は、工具でねじを切って作る。作った注ぎ口は、石膏で型をとった湯たんぽ本体に土で接着する。栓は、また別に作るのだそう<br />3.釉薬(うわぐすり)をつける<br />調合された釉薬を攪拌し、湯たんぽ本体をくぐらせる。このときのくぐらせ方は、釉薬の粘度や含まれる金属分など性質によってそれぞれ違うため、「この工程は経験値がものを言う」(加藤さん)。湯たんぽの注ぎ口は、指につけた皮の指ぬきでふさぐ<br />4.窯で焼く<br />内部は真っ白な6m のガス窯。ここに湯たんぽを入れてじっくり時間をかけて焼く。また、ゆっくりと時間をかけて冷却されるのも大窯の特徴で、趣味の陶芸などで使う小型の窯とは比べ物にならないくらい、釉薬の色も仕上がり具合も変わる<br />

迷路のような狭い路地を抜けてたどりつく、弥満丈欅窯。風の通る地形や高田特産の土など、多治見の風土を十二分に生かした窯で、工場は加藤さんが自力で建てたものです。その中で行なわれている、湯たんぽ作りの一部を見せてもらいました。

1.型を取る(がばいこみ)
石膏の型に土を流し込み、型の内壁に土がついて厚みが出たら、中の土を出して均一にして、半日ほど自然乾燥。石膏が水分を吸って固くなる。ちなみに、湯たんぽ表面が波型になっているため、中の土を出すときにやわらかい土が流れ出ない仕組みになっている
2.注ぎ口を作る
栓をするための注ぎ口は、工具でねじを切って作る。作った注ぎ口は、石膏で型をとった湯たんぽ本体に土で接着する。栓は、また別に作るのだそう
3.釉薬(うわぐすり)をつける
調合された釉薬を攪拌し、湯たんぽ本体をくぐらせる。このときのくぐらせ方は、釉薬の粘度や含まれる金属分など性質によってそれぞれ違うため、「この工程は経験値がものを言う」(加藤さん)。湯たんぽの注ぎ口は、指につけた皮の指ぬきでふさぐ
4.窯で焼く
内部は真っ白な6m のガス窯。ここに湯たんぽを入れてじっくり時間をかけて焼く。また、ゆっくりと時間をかけて冷却されるのも大窯の特徴で、趣味の陶芸などで使う小型の窯とは比べ物にならないくらい、釉薬の色も仕上がり具合も変わる
■今年の新作湯たんぽ
ハリネズミの針とウサギの耳を踏むことで竹踏み健康器のように足の裏を刺激し、血行を良くする効果も併せ持つ。足の裏を温めて血液の循環を上げれば免疫力もアップ。裏面は、敷布団が濡れないように腹部分を曲面状に底上げ。赤い湯たんぽは情熱を、オーガニックホワイトは心機一転・自然への畏敬を表現。いずれも震災の被災者を励ますカラー展開。価格は2,500円(通常)、3,000円(ハリネズミ/ウサギ型)。

ハリネズミの針とウサギの耳を踏むことで竹踏み健康器のように足の裏を刺激し、血行を良くする効果も併せ持つ。足の裏を温めて血液の循環を上げれば免疫力もアップ。裏面は、敷布団が濡れないように腹部分を曲面状に底上げ。赤い湯たんぽは情熱を、オーガニックホワイトは心機一転・自然への畏敬を表現。いずれも震災の被災者を励ますカラー展開。価格は2,500円(通常)、3,000円(ハリネズミ/ウサギ型)。

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