袋井市「ふくいろくらぶ」| 2018年5月号掲載

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萌ゆる緑「香りの丘 茶ピア」を訪ねて

新茶の季節がやって来た!

静岡県は、栽培面積や生産量、出荷量などの日本一を誇る茶どころ。
待ちに待った新茶シーズンが到来し、萌黄色に染まった新芽が、風にそよぐ。
茶の魅力を発信する体験施設「香りの丘 茶ピア」で、茶のイロハを聞いた。

■芳香が収穫の合図 今年の出来は上々!
 毎年4月の中旬から一番茶の収穫がスタート。人の手や機械によって摘まれた茶は、蒸機によって加工される。酸化酵素を死活させ、成分変化を防ぐためだ。冷却機で冷やされた後は、茶葉を乾かす工程へ。圧力を加えて揉みこみながら、茶葉に含まれた水分を外に出す。「ただ乾燥させるだけでいいのであれば、熱風をかければいい。大切なのは、品質劣化のもととなる水分を外へ出すことなのです」と鈴木さん。現在は粗揉機や揉捻機を用いるが、かつては人力によるものであった。その技術は手もみ製法といわれ、完成までに4、5時間を要す。茶葉の水分を飛ばしたら、最終工程の「乾燥」を経て、荒茶は完成を迎える。<br /> 袋井市をはじめ、磐田市、浜松市、森町の生産者によって加工された荒茶は、「茶ピア」内の加工所へ。茶葉をさらに乾燥させるための「火入れ」や、木茎などを取り除く作業を経て、出荷のときを迎える。JA遠州中央で取り扱うのは、普通煎茶と深蒸し煎茶。「蒸し時間の違いで種類が分かれます。水色が『黄金色』の普通煎茶は、豊かな香りと、後味のすがすがしさが特徴。近年は、苦みや渋みを敬遠する傾向から、甘味の引き立つ深蒸し煎茶が人気ですが、好みは分かれますね」。<br />

3月末、ひょっこりと顔をのぞかせた新芽。これから伸び盛りを迎える茶樹は、約3週間で20センチほど背を伸ばす

 袋井市街地から車で南東へ。大通りから脇道を進むと、車窓には見渡す限りの茶畑が広がっている。各地で記録的な大雪が降るなど、寒さに見舞われた今冬。長い冬を経た、今年の茶の出来が気にかかる。
 十数分ほどで、袋井市岡崎にある茶の体験施設「香りの丘 茶ピア」に到着。センター長の鈴木康一さんが茶畑を案内してくれた。「お茶の木は冬になると、休眠に入ります。冬の間に成長を止めて体力を蓄えるのです。休みが必要なのは、人間もお茶も一緒ですね」。冬が長ければ長いほど体力を蓄え、力強い美味しい一番茶が育つ。
 取材に訪れたのは、3月末。春の到来とともに目覚めた茶樹からは、数センチほどの若葉がツンと突き出していた。これから収穫期に向けて、一気に成長するのだという。
 ひとつの芯に葉が4枚ついたら、収穫適期。「茶畑に足を踏み入れると、いい香りがするんです。茶が芳香を放ちながら、『収穫期だよ』と教えてくれているようで」と笑う。
■数々の工程を経て消費者へ 蒸し時間で異なる風味や水色
 毎年4月の中旬から一番茶の収穫がスタート。人の手や機械によって摘まれた茶は、蒸機によって加工される。酸化酵素を死活させ、成分変化を防ぐためだ。冷却機で冷やされた後は、茶葉を乾かす工程へ。圧力を加えて揉みこみながら、茶葉に含まれた水分を外に出す。「ただ乾燥させるだけでいいのであれば、熱風をかければいい。大切なのは、品質劣化のもととなる水分を外へ出すことなのです」と鈴木さん。現在は粗揉機や揉捻機を用いるが、かつては人力によるものであった。その技術は手もみ製法といわれ、完成までに4、5時間を要す。茶葉の水分を飛ばしたら、最終工程の「乾燥」を経て、荒茶は完成を迎える。<br /> 袋井市をはじめ、磐田市、浜松市、森町の生産者によって加工された荒茶は、「茶ピア」内の加工所へ。茶葉をさらに乾燥させるための「火入れ」や、木茎などを取り除く作業を経て、出荷のときを迎える。JA遠州中央で取り扱うのは、普通煎茶と深蒸し煎茶。「蒸し時間の違いで種類が分かれます。水色が『黄金色』の普通煎茶は、豊かな香りと、後味のすがすがしさが特徴。近年は、苦みや渋みを敬遠する傾向から、甘味の引き立つ深蒸し煎茶が人気ですが、好みは分かれますね」。<br />

JA遠州中央管内で生産された茶が集まる「香りの丘 茶ピア」。間もなく最盛期を迎える加工場をはじめ、直売所、茶室、茶畑などがある

 毎年4月の中旬から一番茶の収穫がスタート。人の手や機械によって摘まれた茶は、蒸機によって加工される。酸化酵素を死活させ、成分変化を防ぐためだ。冷却機で冷やされた後は、茶葉を乾かす工程へ。圧力を加えて揉みこみながら、茶葉に含まれた水分を外に出す。「ただ乾燥させるだけでいいのであれば、熱風をかければいい。大切なのは、品質劣化のもととなる水分を外へ出すことなのです」と鈴木さん。現在は粗揉機や揉捻機を用いるが、かつては人力によるものであった。その技術は手もみ製法といわれ、完成までに4、5時間を要す。茶葉の水分を飛ばしたら、最終工程の「乾燥」を経て、荒茶は完成を迎える。
 袋井市をはじめ、磐田市、浜松市、森町の生産者によって加工された荒茶は、「茶ピア」内の加工所へ。茶葉をさらに乾燥させるための「火入れ」や、木茎などを取り除く作業を経て、出荷のときを迎える。JA遠州中央で取り扱うのは、普通煎茶と深蒸し煎茶。「蒸し時間の違いで種類が分かれます。水色が『黄金色』の普通煎茶は、豊かな香りと、後味のすがすがしさが特徴。近年は、苦みや渋みを敬遠する傾向から、甘味の引き立つ深蒸し煎茶が人気ですが、好みは分かれますね」。
■栽培に適した温暖な気候 全国の荒茶の約4割を生産
 茶の伝来は今から約1200年前。最澄や空海など、唐に渡った僧侶が日本に持ち帰ったのがはじめとされる。鎌倉時代には、栄西禅師が著書『喫茶養生記』の中で、「茶は養生の仙薬なり、延齢の妙術なり」と、茶の効能を説いた。時を同じくして、茶文化は静岡県にも到来。聖一国師が、中国から持ってきた茶種を、生誕地に近い足久保(静岡県葵区)に植えたと伝わる。<br /> 農林水産省の統計によると、全国の荒茶生産量7万8800tのうち、約4割の3万800tが静岡県内でつくられている。茶の栽培に適した年間平均気温は、14~16℃以上。年間最低でも1300㎜と適度な降水量が求められ、静岡県の温暖な気候は茶栽培にうってつけだ。<br /> 日本一の茶どころとして茶生産の発展を牽引していた静岡県だが、消費者ニーズの多様化や茶葉の価格低迷などにより、生産量は年々減少。さらに、生産者の高齢化や後継者不足が追い打ちをかける。「ペットボトル飲料が主流の現代。急須を持たない家庭が増え、茶葉はあまり売れなくなってきています」と鈴木さんは表情を曇らせる。<br />

手でかき混ぜながら茶葉をぱらぱらと振るい落とすことで、葉の表面を乾燥。茶葉の水分を出すために、体全体で力を加えていく

 茶の伝来は今から約1200年前。最澄や空海など、唐に渡った僧侶が日本に持ち帰ったのがはじめとされる。鎌倉時代には、栄西禅師が著書『喫茶養生記』の中で、「茶は養生の仙薬なり、延齢の妙術なり」と、茶の効能を説いた。時を同じくして、茶文化は静岡県にも到来。聖一国師が、中国から持ってきた茶種を、生誕地に近い足久保(静岡県葵区)に植えたと伝わる。
 農林水産省の統計によると、全国の荒茶生産量7万8800tのうち、約4割の3万800tが静岡県内でつくられている。茶の栽培に適した年間平均気温は、14~16℃以上。年間最低でも1300㎜と適度な降水量が求められ、静岡県の温暖な気候は茶栽培にうってつけだ。
 日本一の茶どころとして茶生産の発展を牽引していた静岡県だが、消費者ニーズの多様化や茶葉の価格低迷などにより、生産量は年々減少。さらに、生産者の高齢化や後継者不足が追い打ちをかける。「ペットボトル飲料が主流の現代。急須を持たない家庭が増え、茶葉はあまり売れなくなってきています」と鈴木さんは表情を曇らせる。
■新商品開発と茶摘み体験 魅力向上で消費拡大を狙う
 現状を打破すべく、JA遠州中央では新商品開発に注力。今年2月に、粉末茶の販売をスタートした。商品はスティックタイプの「かぶせ茶」と「抹茶煎茶」の2種類。いずれも、JA遠州中央管内で生産された茶葉を使用している。「一般的な粉末茶は溶けやすくするためにデキストリンを加えていますが、茶本来の味を楽しんでいただくため、我々の商品には茶葉以外に一切加えていません」と話す。「かぶせ茶」には、袋井産の茶葉を使用。光合成を抑制するため、黒いネットを茶樹に被せて栽培されたかぶせ茶は、旨み成分であるテアニンを多く含む。渋さが控えめで甘味の強い口当たりが特徴だ。水や湯に溶かすだけで、本格的な味わいを楽しめると好評。粉末状であるため、料理や菓子に取り入れられる点でも人気を集めている。消費拡大を狙い、今年度中にティーバッグ茶も販売予定。「茶を気軽に楽しんでもらい、地元産のお茶のファンを増やしたい」と鈴木さんは意気込む。<br /> 地元産茶のPRにも力を注ぐ。「香りの丘 茶ピア」では、地域の子どもたちや観光客などを対象に、体験講座を実施。4月下旬~5月上旬にかけて、「お茶摘み体験」ができるほか、伝統技法を学ぶ「手揉み体験」や四季折々の景観を楽しめる茶室「茶遊庵」での「茶席体験」がある。「地域の子どもたちは茶畑こそ見たことあるものの、どのようにお茶ができるのかまでは知りません。手揉み体験では、歓声を上げながら楽しそうですよ」と微笑む。直売所では、JA遠州中央管内で栽培された茶をはじめ、特産品などを販売。声をかければ、茶の正しい入れ方をレクチャーしてくれる。<br /> 収穫・加工を経た荒茶が加工所に集まり始め、まもなく仕上げの最盛期を迎える。新茶を心待ちにするファンのため、今年も作業に力が入る。<br />
文/新井のぞみ

直売所近くにある茶室「茶遊庵」は、四季の草木を眺めながら、茶が楽しめる体験施設。イベントも開催され、「新春茶会」「お月見茶会」にはたくさんの人でにぎわう

 現状を打破すべく、JA遠州中央では新商品開発に注力。今年2月に、粉末茶の販売をスタートした。商品はスティックタイプの「かぶせ茶」と「抹茶煎茶」の2種類。いずれも、JA遠州中央管内で生産された茶葉を使用している。「一般的な粉末茶は溶けやすくするためにデキストリンを加えていますが、茶本来の味を楽しんでいただくため、我々の商品には茶葉以外に一切加えていません」と話す。「かぶせ茶」には、袋井産の茶葉を使用。光合成を抑制するため、黒いネットを茶樹に被せて栽培されたかぶせ茶は、旨み成分であるテアニンを多く含む。渋さが控えめで甘味の強い口当たりが特徴だ。水や湯に溶かすだけで、本格的な味わいを楽しめると好評。粉末状であるため、料理や菓子に取り入れられる点でも人気を集めている。消費拡大を狙い、今年度中にティーバッグ茶も販売予定。「茶を気軽に楽しんでもらい、地元産のお茶のファンを増やしたい」と鈴木さんは意気込む。
 地元産茶のPRにも力を注ぐ。「香りの丘 茶ピア」では、地域の子どもたちや観光客などを対象に、体験講座を実施。4月下旬~5月上旬にかけて、「お茶摘み体験」ができるほか、伝統技法を学ぶ「手揉み体験」や四季折々の景観を楽しめる茶室「茶遊庵」での「茶席体験」がある。「地域の子どもたちは茶畑こそ見たことあるものの、どのようにお茶ができるのかまでは知りません。手揉み体験では、歓声を上げながら楽しそうですよ」と微笑む。直売所では、JA遠州中央管内で栽培された茶をはじめ、特産品などを販売。声をかければ、茶の正しい入れ方をレクチャーしてくれる。
 収穫・加工を経た荒茶が加工所に集まり始め、まもなく仕上げの最盛期を迎える。新茶を心待ちにするファンのため、今年も作業に力が入る。
文/新井のぞみ

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